2025年11月、NHKが発表した紅白歌合戦出場者リストに、韓国発のガールズグループ「aespa」の名が初めて加わりました。
しかしその知らせと同時に、日本のSNS上では批判的なムーブメントが一気に広がり、aespaの出演中止を求めるオンライン署名活動が数万単位で急拡大。波紋を広げています。
事の発端は、グループの中国出身メンバーである**ニンニン(NINGNING)が数年前に投稿した、“ある写真”の存在。
投稿されたのは、きのこ雲を模したランプの画像。これが「原爆を彷彿とさせる」**と、過去に一部で物議を醸していたものでした。
それがなぜ今、再び問題視されているのか。
そして、出演停止を求める声とそれに反発する声がなぜ真っ二つに分かれているのか。
本稿では、感情的な議論を一歩引いて、冷静に構造的・文化的な背景からこの炎上を読み解いていきます。
■ 論点①:「3年前の投稿」がなぜ今、掘り起こされたのか?
ニンニンが問題のランプを投稿したのは、2022年5月。
それから3年以上が経過した2025年、なぜこの投稿が再燃し、署名運動にまで発展したのでしょうか。
🔍 “タイミング”の妙が引き金に
- 2025年=戦後80年の節目
- NHK紅白の司会者に広島・長崎出身者
- 出演者の一部が平和を象徴する曲を披露予定
このように、歴史的背景と演出意図が重なる中で「被爆国に対する配慮」が一層重視されるタイミングでの出演決定だったことが、再燃の大きな要因と見られています。
■ 論点②:ニンニンの“原爆ランプ”は無意識か、意図的か?
問題視されたランプは「キノコ雲の形をした卓上インテリア」であり、ニンニンはそれを「かわいい」と紹介しただけでした。
投稿には原爆を示唆する言葉や歴史的言及は一切なく、彼女自身の発言から「悪意」や「政治的意図」は読み取れないのが事実です。
とはいえ、日本における「きのこ雲」は極めてセンシティブな象徴。
広島・長崎の惨劇と直結し、国民感情としては強く反応してしまうのも無理はありません。
このすれ違いは、国や文化によって“象徴が異なる”という典型例です。
| 地域 | キノコ雲の意味合い |
|---|---|
| 日本 | 被爆・戦争被害・悲劇の象徴 |
| 海外(特に中韓) | 戦争終結や“アートデザイン”として中立視される傾向 |
つまり今回の炎上は、**歴史教育・文化認識のギャップがもたらした「感情的断絶」**とも言えるでしょう。
■ 論点③:オンライン署名という“正義”の拡散
署名活動は、Change.orgで2025年11月17日に開始されました。
数時間で1.6万件超の賛同を得たとされ、X(旧Twitter)上では「#aespa紅白出場中止」や「#原爆ランプ」などのワードが一気に拡散。
署名の文面には、
「日本人として、このような投稿をした人物が紅白に出ることに納得できない」
といった感情的主張が並びます。
💬 支持派の主張
- 「戦後80年の紅白にふさわしくない」
- 「日本人の感情を無視したNHKの判断」
- 「再発防止のためにも出演中止を」
一方で、この動きに対する“反発”もすぐに生まれました。
■ 論点④:aespaファン・文化交流支持層の反論
ニンニンの投稿を擁護する声も一定数存在します。
aespaは世界的に人気のあるK-POPガールズグループで、日本でもドーム公演を成功させており、ファン層も厚いのが実情です。
💬 擁護派の意見
- 「3年前の投稿を蒸し返すのは酷すぎる」
- 「悪意のない投稿まで攻撃するのは“魔女狩り”」
- 「K-POP排除のための政治的な運動では?」
- 「文化の違いまで非難するのは閉鎖的」
このように、今回の騒動は文化間の断絶と、感情的ナショナリズムの衝突を浮き彫りにしています。
■ 論点⑤:NHKは“何を守るべきか”という難題
署名活動が広がる中、NHKやaespaの所属事務所(SMエンターテインメント)は現在のところ沈黙を保っています。
では、NHKが今後取る可能性のある選択肢は何でしょうか?
想定される対応パターン
- 出演をそのまま維持(現状)
- 演出調整(コメントや演出の変更)
- 事前謝罪や説明文の挿入
- 出演者入れ替え(取り消し)※可能性は低い
公共放送という立場から、世論・スポンサーへの影響を慎重に見極める必要があることから、対応には時間がかかると予測されます。
■ 本質的に問われているのは「公共と記憶の線引き」
今回のaespaニンニン騒動が突きつけるのは、単なる「タレントの投稿問題」ではありません。
むしろ本質はこうです:
● 公共の場に出る人物が、どこまで“過去の表現”を問われるのか?
● 戦争記憶と文化交流は、どう共存できるのか?
● 感情に訴える署名運動は、正義か、圧力か?
SNS社会では、過去の投稿が「現在の場」で再解釈され、いとも簡単に“炎上の火種”になり得ます。
しかし、そこには**歴史教育・文化理解・公共性の捉え方という“複雑な前提”**が存在していることを、忘れてはいけません。
■ まとめ:「炎上」は批判ではなく、対話の入り口にできるか
- aespa・ニンニンが過去に投稿した「原爆型ランプ」が日本のSNSで再炎上
- NHK紅白出演をめぐるオンライン署名が1万件以上に拡大
- 文化・歴史・感情が交錯し、意見が真っ二つに分裂
- NHKと事務所は対応を公表していないが、注目度は高まる一方
- 本質は「過去表現」と「公共の出演」の関係性にある
2025年12月31日、紅白本番のステージでaespaが何を歌い、どんな演出が施されるのか。
それは単なるパフォーマンスを超え、**日本における公共性・文化の寛容さを問う“象徴的な時間”**になるかもしれません。
私たちは今、**「誰を排除するか」ではなく「どう理解し合えるか」**という選択肢を問われているのです。

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