2025年12月7日、東京・国立競技場を舞台に行われた「早明戦」は、ラグビーファンの心を熱くする一戦となりました。明治大学と早稲田大学という名門同士の対決は、関東大学対抗戦Aグループの最終戦という位置づけもあり、5万8000人以上の観客を動員。テレビ中継の平均視聴率も12%を超え、社会的な注目度も極めて高いものでした。
試合は明治大学が25対19で逆転勝利を収め、5年ぶりの対抗戦優勝を飾る結末となりましたが、会場を後にした多くの観客が抱いたのは喜びではなく、ある“疑問”でした。**審判の判定が試合の流れに大きな影響を及ぼしたのではないか?**という問題が、試合終了直後からSNSを中心に激しい議論を巻き起こしたのです。
「誤審だったのでは?」とされた3つのシーン
今回の試合では、レフェリーの判断に対して複数の場面で不満の声が上がりました。とりわけ注目された3つのプレーを紹介します。
1. 明治のトライ取り消し
後半28分、明治大学のフルバック・古賀龍人選手が、敵陣深くで弾いたボールを自らキャッチし、そのままインゴールへと運びました。多くの観客が“トライ成立”を確信した瞬間、主審の笛が鳴り、ノックオン(前方に落とした反則)との判定により、得点は認められませんでした。
問題となったのは、TMO(ビデオ判定)未使用のまま判定が即時に下されたこと。試合後、明治大学主将の平翔太選手が、「審判から“実はトライだったかもしれない”と言われた」と証言したことで、この判定が誤審であった可能性が強まりました。
2. スクラムでの反則の多発
前半を通じて、スクラムでの笛が頻繁に吹かれ、プレーが幾度も中断されました。前半だけで6度のペナルティがあり、特に明治大学側への指摘が目立ちました。専門解説者の中には「試合の流れを見ながら、もう少しプレーを続行させる余地があった」と疑問を呈する声もありました。
選手たちも調整の時間が持てず、観客からは「リズムが壊された」「試合のテンポがバラバラ」といった不満が相次ぎました。
3. 危険タックルの見逃し疑惑
後半に入ってからのプレー中、明治の選手が空中でボールを処理しようとした場面で、頭部付近に対する接触がありました。これに対して審判団はカードを出さず、プレーは継続。SNSでは「レッドカード級の危険プレーでは?」という指摘が広がり、選手の安全確保という面からも批判の的となりました。
早明戦2025のレフェリーは誰?
この試合の主審を担当したのは、日本ラグビー協会公認のA級レフェリーです。
千葉県松戸市出身。高校時代からラグビーを始め、流通経済大学でプレー。その後、選手からレフェリーへ転身し、2025年時点では日本ラグビー協会公認のA級レフェリーとして、トップレベルの試合を多数担当している人物です。
Japan Rugby League One(旧・トップリーグ)でもレフリー経験があり、その実績は決して浅くありません。ただ、今回の早明戦では彼の判断が度々物議を醸し、ネット上では
- 「経験のあるレフェリーだからこそ残念」
- 「TMOがなければ判断ミスもある」
といった声が飛び交いました。
なぜTMOが使われなかったのか?
今回の誤審疑惑を大きくした一因に、TMO(テレビジョン・マッチ・オフィシャル)の非採用があります。TMOとは、試合中の重要な場面や微妙なプレーに対して、映像を使って確認・判定を行う制度であり、国際大会やプロリーグではすでに導入が進んでいます。
しかし、大学ラグビーの現場では、運用のコスト面や設備環境の整備が追いついておらず、多くの試合でTMOは導入されていません。今回の早明戦も例外ではなく、審判がその場で瞬時に下す判断に全てが委ねられる状況でした。
もしTMOがあれば、あの明治の“幻のトライ”は認められていたかもしれません。試合の結果そのものに影響が出る可能性があったという点で、TMO導入の必要性を再認識させる出来事だったと言えるでしょう。
ファンや選手の声──勝っても残るモヤモヤ
通常、試合の判定に対してクレームが出るのは、敗れたチームのサポーターからが多い傾向にあります。しかし、今回の早明戦では、勝利を収めた明治側の関係者やファンからも「納得できない」という声が多く聞かれた点が、異例とも言える事態を浮き彫りにしました。
X(旧Twitter)では、
- 「勝ったけどスッキリしない」
- 「審判が試合の流れを壊した」
- 「あのトライが認められていたら…」
といった意見が続々と投稿され、試合後すぐに「#早明戦」がトレンド1位に浮上。ネット上でも熱戦以上に、レフェリングの是非を問う議論が巻き起こったのです。
大学ラグビー界が抱える“構造的な課題”
今回の誤審疑惑は、1人のレフェリーの問題として片付けられるものではありません。むしろ、大学ラグビー全体の仕組みや制度に関わる構造的な課題が浮き彫りになったとも言えるでしょう。
大学スポーツであっても、早明戦のように数万人を集める大会では、プロ並みの対応が求められます。ところが、運営体制や審判のサポート体制、TMOのような技術的支援はまだまだ未整備な状況です。
また、審判に対する教育や評価制度の透明化、試合後の説明責任の在り方なども今後の課題と言えるでしょう。ラグビーは「ノーサイド」の精神に象徴されるように、フェアネスが競技の根幹です。その信頼を損なわないためにも、改革が求められています。
おわりに──次の早明戦を“クリーン”なものにするために
2025年の早明戦は、スコアの上では明治大学の勝利として歴史に刻まれました。しかしその裏では、判定への不満と課題が浮かび上がり、勝敗を超えた論点が残されました。
ラグビーというスポーツの魅力は、激しい肉体のぶつかり合いとともに、ルールに則った戦い、そして審判へのリスペクトにあります。だからこそ、今回のような判定に疑念が残る試合は、選手・ファン双方にとって後味の悪さを残す結果になってしまいました。
大学ラグビーがさらなる成長を遂げていくためにも、レフェリーを支える制度や環境の整備、公平な試合運営を支えるテクノロジーの導入は欠かせません。
来年以降の早明戦が、スポーツ本来の魅力に満ちた清々しい戦いとして語られるためにも、今こそ改革の一歩を踏み出す時ではないでしょうか。

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